Gallery


“天  空”
絶えず余裕なく、日々こなさなければならない生業としての写真に追われ、 僕はイラ立っていた。少しばかり走り続け過ぎたようだ。どんなかたちでもよかった。 僕は揺さぶられる何かを探していた。 新緑季のある日、学友の写真家、作野周史の誘いを受け乗鞍行脚へと向かった。新緑のポイントなどを慣れた彼のうしろを必死でついて行くだけで僕は疲れ果て、 初日はなんとも情けないかたちで終えた。頭と身体をネーチャーフォトグラファーにするには相当時間がかかりそうだ。 撮影二日目、ぼくにとって決定的な出会いがあった。早朝3時に起床、6月中旬と いうのに身の切るような寒さに震えつつ暗闇をついて乗鞍岳山頂目指して走る。 標高約3000メートルだ。彼の説明では、前夜の天候から考えて運良くガスが 出なければ雲海に連なる峰々に昇る朝日を拝めるという。 宿を出て車で走ること小一時間、山頂近くのポイントに到着。 あたりは闇一面でよく見えないが幸いガスはなさそうだ。 寒さの中、息を飲み変化を待つ。やがて漆黒の眼前がわずかに色ずき、 静かに前方の連山がその輪郭を現わす。・・・・・そして、動いた! めまぐるしく変わりゆく光の舞い、それに呼応するように唱いあげる色彩。 僕の中を言葉達が貫いた。“天空”“浄土”“転生”「天国は地上にあったのか……」 日々繰り返されるあたりまえの景色に僕は感動していた。 これらの作品はあのときの僕の感動を伝えられるほど力のあるものかどうかわからない。 しかしこの風景に僕は揺さぶられたのだ。僕自身を覚醒させるには理想的な出会いだった。 その感覚を確認する作業をしばらく続けていこうと思う。


















☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆        
★ Kiyotsugu Tsukuma Photo Office ★
tsukuma@mb.infoweb.ne.jp
            
《TSUKUMA Photo museum》
http://homepage3.nifty.com/TSUKUMA/
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 
back